プレスリリース

幼児期からの英語教育に重要性 英語習得に役立つランゲージングとは

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。

                                                                       

  宮城教育大学の鈴木渉教授は、英語習得におけるランゲージングの効果について研究されています。ランゲージングとは、自分が理解している内容や聞いたり読んだりして得た情報をことばで表すことを通して、知識を形成・再構築していくことで、アウトプットの新しい概念です。ランゲージングがどのように英語学習に役立つのかなどをテーマにお話を伺いました。

<インタビュー記事のまとめ>

●ランゲージングの学習効果を調べる研究は新しい分野だが、さらなる研究成果の積み重ねが必要なものの、英語の文法などに関する明示的知識(ことばで説明できる知識、その存在を意識できる知識)を習得するうえで役立つ。

●ランゲージング活動は、文法を分析的に捉えるのが苦手な学習者の能力を補い、変化させる可能性が示された。

アウトプットの新しい概念「ランゲージング」

「languaging(ランゲージング)」ということばは、2006年に正式に発表されて幅広く認知された新しい概念です(Swain, 2006)。

       

提供:宮城教育大学 鈴木渉教授

     例えば、”There are two girls.”という英文で、なぜisではなくareなのかを自分のことばを使って考えたり話したりしながら、自分の不確かな知識を再構築することはランゲージングです。

英語習得に役立つランゲージングの可能性

 鈴木教授によると、ランゲージングはこの15〜16年間で研究成果が世界各地で積み重なってきており、「理論的にも実証的にも第二言語習得を促進する可能性があります」とのこと。特に英語のライティングでは明示的知識が役立ちますが、教師や教科書の説明を見聞きするだけではなく、そこで得た知識を「自分のことばや経験を通して説明したりするランゲージングによって、深く理解し、その結果として、使える知識になるのではないか」と話します。

 鈴木教授らが日本人大学生を対象に行った実験(Ishikawa  & Suzuki, 2023)では、言語を分析的に捉えることが苦手な学生たちはランゲージング活動によって文法理解が高まることがわかりました。言語を分析的に捉える能力は、英語学習がうまくいくかどうかに大きく影響する個人差の一つ。「ランゲージング活動には、個人差を埋める可能性だけではなく、さらには、個人差を変える可能性があるかもしれません」と期待を寄せ、小学校でよく実践されている振り返り活動などに取り入れることができると言います。

まとめ:ランゲージングは日本の英語教育にとって重要な研究分野

 小学校では、教師が文法について説明するわけではありませんが、子どもたちはなんとなく直感的にわかる暗示的知識を身につけていることがわかっています(内野, 2021)。小学生のときに「英語がなんとなくわかる」と思っていた子どもたちの中には、中学校に入ってから明示的知識が重要となる学習を始めたときに「わからない」、「難しい」とつまずいてしまう子どもがいるのかもしれません。小学校で身につける暗示的知識は、中学校で身につけようとする明示的知識の土台になることが期待されています(板垣 & 鈴木, 2011)。もし、明示的知識を身につけるうえでの個人差が適性(言語を分析的に捉える能力)の違いとも関係しているのであれば、その適性の差を埋められる可能性のあるランゲージングは、日本の英語教育にとって重要な研究分野です。

 全国の中学3年生を対象とした2017年の英語力調査では「話す」・「書く」といったアウトプットの力が不足していることが課題として指摘されました(文部科学省, 2017)。「話す」・「書く」活動だけではなく、自分が英語についてなんとなく知っていることや学んだことについて考えたり説明したりする振り返りや協働学習もアウトプット活動と捉えて効果を探っていくことは、英語学習が得意・苦手という個人差の解決に向かう道の一つだと考えられます。(取材:IBS研究員 佐藤 有里)

 

【Profile】 鈴木 渉 教授(宮城教育大学)

        専門は、英語教育学、第二言語習得。近年は特に、英語のライティングにおけるランゲージングや振り返り活動、教師によるフィードバックの効果、それらの効果に影響する個人差などについて研究を行う。また、小学校英語教育に関する研究や教員の養成・研修、検定教科書の開発などにも長年携わる。東北大学大学院  教育学研究科にて修士号(教育学)、トロント大学オンタリオ教育研究所にて博士号(第二言語教育学)を取得。宮城教育大学 教育学部 専任講師、准教授を経て、2021年より現職。言語科学会 編集幹事、小学校英語教育学会 事務局長、Language  Awareness 編集委員会委員。

※なぜランゲージングが重要か、小学校の授業にどのようにランゲージングを取り入れられるかなど、詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記の記事をご覧ください。

前編:https://bilingualscience.com/english/2023060201/ 

後編:https://bilingualscience.com/english/2023060501/

 

    

■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所

(World Family’s Institute of Bilingual Science)

事業内容:教育に関する研究機関

      HP(https://bilingualscience.com/) 

     Twitter(https://twitter.com/WF_IBS)

所   長:大井静雄

     脳神経外科医・発達脳科学研究者ドイツ・ハノーバー国際神経科学研究所

     (INI)小児脳神経外科名誉教授・医学博士

所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 

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