プレスリリース

日本初の公立小学校でのイマージョン教育実施、英語使用意欲も観察される

 「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。

 

 豊橋市立八町小学校(愛知県)は、イマージョン授業の研究授業および研究協議会を2023年6月26日(月)に実施しました。同校は、2020年度より、国語と道徳以外の教科は主に英語を使って学ぶイマージョン学級を開設。公立小学校によるイマージョン教育(※1)の導入は、国内初の取り組みです。 IBSは、イマージョン教育の研究を行う原田哲男教授(早稲田大学教育・総合科学学術院/IBS学術アドバイザー)とともに、研究活動および社会貢献活動の一環として、2021年度から計5回の授業視察や教員などとの意見交換を実施してきました。今回の授業観察をもとに、子どもたちがどれくらい英語を使おうとしているか、という児童の態度について紹介します。

(※1)イマージョン教育は、バイリンガル教育の一つの形態。学校の教科を二つの言語(母語ともう一つの言語)で指導し、両方の言語を読み書きレベルまで育て、さらに二つの社会文化を受容できることを目的とする。

<インタビュー記事概要>

・入学時からイマージョン学級で学んできた4年生の算数授業では、日本語を使って発言できる教室環境でも、知っている英語を使って自分の考えを表現しようとする態度が観察された。

・イマージョン生徒は、通常の外国語授業しか経験していない生徒よりも、自発的に外国語を使ってコミュニケーションをとろうとする意思(Willingness to Communicate/WTC)が強いことを示したカナダの研究がある。ただし、WTCにはさまざまな要因が影響するため、一人ひとりの児童理解に基づいた教室環境づくりや授業計画なども重要。

・八町小児童の英語使用は、主に教科学習に関する教師とのやりとりに限られる。「地域への還元」を目指す豊橋版イマージョン教育にとっては、英語を使う状況・場面・目的をより豊かにすることが課題。

八町小のイマージョン学級の特徴

教師が英語を使って学習指導要領に基づいた授業を行う。重要な用語や概念は日本語も使って指導し、子どもたちは日本語で発言したり質問したりすることもできる。子どもたちは、日本語の使用を禁止されているわけではなく、教師が日本語を理解できることを知っている。よって、常に英語と日本語のどちらを使うか選べる状況。

子どもたちはどれくらい英語を使おうとしているか?

●Yes/Noまたは単語で答えられるような教師の発問に答えるとき

→子どもたちはほぼ100%英語を使用

●教師から考えや意見を聞かれたとき

→手を挙げる子どもたちはクラスの1/3程度だが、その全員ができる限り英語を使おうとしている。

●グループ活動で友だちとやりとりするとき

→基本的に日本語が使われているが、単元で重要な語彙や数字など、部分的に英語を使っている。

●クラス全体へグループの意見を発表するとき

 →授業で繰り返し使われている英語のキーワードやセンテンスを使おうとしていて「クラス全体の活動では英語を使う」という意識がある。

英語を使う機会があれば使おうとする

八町小のイマージョン授業で教師が発問したとき、子どもたちには「英語を使って発言する」、「日本語だけで発言する」、「何も発言しない」というように、いくつかの選択肢があります。授業観察からは、子どもたちが少なくともクラス全体の活動では「英語を使って発言する」を選び、自分が知っている英語をできる限り使おうとしていること、さらに、間違いを恐れずに自分なりに文を組み立てて話そうとしていることがわかりました。

研究協議会で八町小教員と意見交換

5回目の視察となる今回は、「児童」に着目し、子どもたちの英語を使おうとする意欲や態度を観察しました。授業後、原田教授のもとでイマージョン教育やバイリンガル教育について学ぶ学部生・大学院生など計6名も参加。研究協議会で八町小教員との意見交換を行いました。

授業を担当した教員も、研究協議会にて以下の感想を述べていました。「子どもたちは、英語コミュニケーションスキルがまだ発達段階にあるものの、恐れずに自分の考えを表現していました。英語でどのように表現するかわからなくても、具体例を挙げて説明したり、ジェスチャーや母語を使ったり、いろいろな方法で表現できることを知っています。このような子どもたちの態度を育て、子どもたちが学習目標を達成できるように支援していきたいです」(日本語訳IBS)

 

※詳しい内容はIBS研究所で公開中の下記の記事をご覧ください。

 https://bilingualscience.com/english/2023082201/

※これまでの八町小のイマージョン授業研究と意見交換会についての記事はこちら

■豊橋市立八町小学校のイマ―ジョン授業づくりから考える:https://bilingualscience.com/english/2023011801/

■過去開催の研究協議会での模様:https://bilingualscience.com/english/2023012001/

 

    

ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所

(World  Family’s Institute of Bilingual Science)

事業内容:教育に関する研究機関 HP(https://bilingualscience.com/) 

                Twitter(https://twitter.com/WF_IBS)

所   長:大井静雄

脳神経外科医・発達脳科学研究者ドイツ・ハノーバー国際神経科学研究所(INI)小児脳神経外科名誉教授・医学博士

所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 

     パシフィックマークス新宿パークサイド1階

設   立 :2016年10 月