開会の冒頭、理大の平野博之学長が「皆さんからの活発な意見交換を通して、現在、計画しているNPO法人が、地域にとってなくてはならない存在となるように有益なご議論をいただきたい」とあいさつ。
次に、NPO法人の事務局長となる予定の理大硬式野球部監督、安井正也・経営学部助手がNPO法人の理念について、「地域の新たなコミュニティーの創出」を掲げ、「すべての人々にスポーツ、文化活動を楽しめる場を提供し、社会に貢献できる人材の育成をめざして活動していく」とし、「子どもたちが勝ち負けでなく、夢中になって楽しめる環境づくりを進めていきたい」と説明、具体的な活動内容についても紹介しました。
続いて、同様のNPO法人として20年以上の実績がある「ワセダクラブ」事務局長の後藤禎和・元早稲田大学ラグビー部監督と、聞き役としてNPO法人設立に尽力し、このNPO法人の理事長となる予定の理大経営学部の山口隆久教授が登壇。後藤事務局長は、ワセダクラブの会員数が約1800人に上り、早稲田大学の体育各部と協働して小中学生、高齢者などを対象としたスクールなどを運営しており、ラグビー、サッカー、チアなど17の事業分野で活動している事例を紹介。クラブ運営のノウハウや事業収入についても言及しました。
一方、山口教授は「まずは野球からスタートしてから広げていきたい」とし、「子どもたちの習い事が地域そのもののコミュニティーの活性化につながるというモデルを考えている」との考え方を述べました。
パネルディスカッションに参加したパネリストは、平野学長、後藤事務局長と岡山県スポーツ協会の越宗孝昌会長▽宮下竣吉・理大客員教授▽前島慶太・岡山市議会議員の5人。テーマは①岡山でスポーツNPOを運営する意義とは②子どもにとってどのような意義があるのか③学生にとってどのような意義があるのかの3点です。熱のこもった意見交換に、会場に詰め掛けた約120人の来場者には熱心にメモを取る姿が目立ちました。
主な発言は以下の通りです。
越宗会長 「岡山県は2014年、スポーツの力で地域づくり、街づくりをやって地域の活性化を図ろうと『スポーツ立県』を宣言し、生涯スポーツの推進と ともに競技スポーツの推進に取り組んできた。現在、学校教育の部活と地域移行が一つの大きな課題で、一番の問題は指導者をどう確保するか。大学が、これから地域移行の担い手として主体的に関わってくれたらありがたい。そういう意味で、岡山理科大学が設立するNPO法人には期待している」
宮下客員教授「学生たちが自分たちの個性と、地域性の中でどんどん自分の可能性を発揮していくことに関して、やはりスポーツは、そのきっかけとして素晴らしいものだ。それを大学という総合的なもののフィルターを通して発揮できれば楽しいし、素晴らしいことだと思う」
後藤事務局長「ワセダクラブを立ち上げた時、他の大学にも波及していったらいいなという希望を持っていたが、20年たってもなかなか普及しなかった。今回、岡山理大が本気になって立ち上げるというのを聞いて、すごくうれしい。規模の大小は関係ない。10年、20年と継続していけばいいと思う」
前島議員 「スポーツを通して岡山に愛着を持ってもらって、岡山の大学に進学して岡山で働いてくれる、そういう流れをつくれるのがスポーツを一緒にやる、スポーツを教えるということだと思う。それに一役買えるのがこのNPO法人だと思っている」
平野学長 「スポーツを教える時に教えている子どもから教えられることもあって、そういうところに気づいていく感性とか直感力が大事だと思う。教えていく中で、大学以外で自己肯定感が得られるようになる。それが学生自身の成長につながると思う。大学の授業だけでは気づけないようなことを体験して、成長してもらいたい」